荻上 2000年代のつっこみ力増大に関しては少し違う見方もしていて、つまり「欲望」を隠しているんですよね。たとえば代表的なヘイトスピーチである「嫌韓」言説は、色々な理由をとってつけているわけですよ。でもどう見ても、もう最初に「攻撃したい!」という欲望がガッチリと固定されて、その欲望を正当化できそうなエビデンスや言い回しを後づけしているわけでしょう。その際、つっこみ力は、欲望を覆い隠すための装置として機能している。
東 その通りです。それは非常に重要ですよ。結局、ぼくが言っているのは「人間は欲望を直視しなければいけない」という話です。
たとえば『一般意志2.0』は嫌韓問題とも関係している。「差別意識をなくそう」とか「韓国と仲良くしよう」とか言っても、そもそも嫌韓の連中には無理だと思うんだよ。彼らは韓国が嫌いなんだから。それは彼らの欲望だから動かせない。
■見たくないものを見る経験
東 それでね、ふだんはお互いに楽しく暮らしていたとして、ふとしたときに気づくとするじゃないですか。「あれ、こいつもしかしてネトウヨ?」みたいな。そのときにどうするか。絶交するのか? いや、そんなことは無理ですよね。そのときまで一緒に仕事をしていたんだし、友情だってある。そこでマジギレして、いきなり相手を説得にかかるのは本当に社会的なのか。それは本当に「他者を受け入れる」ことなのか。人はときに、自分と意見の違う人間を、たとえそれがどれほど自分にとって許し難いものだったとしても、そのまま放置して受け入れなければいけないことがある。これは、放射能問題とかでも同じですけどね。
でも、リベラルなインテリの持つ「議論のできる人間リスト」には、無限の他者とか言いながら「××については意見が一致する人のみを他者と見なす」という付帯条項があってさ、その付帯条項がずらずらつづいているじゃないですか。いまの例だったら、韓国へのヘイトスピーチなど許し難いわけで、そんな人間を放置することそのものがリベラルへの裏切りとなる。
荻上 どんどんブラックリストが増えていきますね。